パンチング板についての説明
パンチング板は、鋼板(ステンレス・鉄・アルミなど)にプレス(金型)でたくさんの穴をあけた板です。
「パンチング」は、打抜き・穴あけの意味。書類をファイルする時に、綴じ穴をあける道具をパンチとかパンチャーといいますが、それと同じです。業者によって、パンチングメタル・パンチングスクリーン・打抜き金網などいろいろな呼び方をしている様です。
通常は丸穴ですが、それ以外にも角穴などさまざまな形の穴があります。
(パンチング板製造業者さんの、持っている金型によります)
なお、弊社はパンチング材料の製造(販売)業者ではなく、パンチング板などの材料を仕入れて商品をつくる加工業者ですので、パンチングの材料販売はしておりません。
当ページは、バスケットなど製作する場合に使う材料のことを、ユーザー(一般の方)に知ってもらい、相談や打合せに資するための、解説や注意点です。
***仕様・規格について***
通常は、丸穴の60度チドリ抜き(配置)のものになりますので、
「パンチング 2t×3φ×5p」 と書いてあれば、板厚2㎜ 穴径3㎜ 穴ピッチ5㎜ の60度チドリ抜きということになります。
チドリとは、「千鳥足」の千鳥のことで、ジグザグ・互い違いの意。
碁盤状に穴を直列で抜くと、身残り部分と、直列穴の部分で強度差が大きくなるため、加工性や耐久性に難点が出る場合があります。
この写真は、一番一般的な丸穴です
←丸穴・60度千鳥抜き
最もポピュラー
穴3つが正三角形の位置
穴4つだと菱形の位置
***開口率について***
穴の大きさに対して、ピッチが小さくなれば開口率が高くなります。
ただし、板厚や穴の大きさ・形状によって打抜き可能なピッチの限度がありますので、何でもありと言うわけにはいきません。
開口率が高いということは、身残り部が小さい(細い)ということで、製造技術的にも製品の強度的にも限度があります。
丸穴・既製品の場合は、開口率が20%~40%のものが多いようです。
50%以上のものもありますが、身残りが少ないので、強度的に弱弱しい感じになります。
開孔率が高いものは、振動や屈伸によって材料にクラック(ひび割れ)が発生しやすくなります。
開口率の計算式を詳しく知りたい場合は、パンチングメーカーさんのウェブページを探していただければと思います。
もっとも一般的な、「60度チドリ抜き」の開孔率の計算式は、下図参照。
計算上の開口率には穴のないフチ(耳)の部分や、加工時の重ねシロなどは当然考慮されていないので、実際の加工品になると開口率は落ちることになります。
同じ板厚・穴径であれば、開口率の高いもの(ピッチが小さなもの)の方が高価になります。たくさんの穴を打抜くほど加工コストは増していくからです。
一般的に、板厚と穴径が同じなら
開口率高い→強度低い・高価
開口率低い→強度高い・安価 となります。
「厚い板に、小さな穴を、小ピッチで抜く」ほど加工難度が高くなりますので、自ずと価格も高くなっていく訳です。
しかし、製品の価格は、材料費だけで決まるわけではありませんので、よくよくご理解をお願い致します。
材料費をケチったばかりに、かえって加工がし難くなったり、不良が出たりしてコスト高を招くということはよくあることです。
丸い穴以外にも、さまざまな形状の穴がありますが、特殊なものになります。
下の写真は、その一例。
← 角穴・碁盤抜き
← 雲形穴
← ヘリンボーン
***表と裏のこと***
パンチング板には、表面と裏面があります。打抜き加工をするため、上型(上刃)側の面が表になり、上刃が突き抜ける裏面(下刃側)にはどうしてもバリがでます。バリといっても大根おろしのように手に怪我するようなひどいものではありませんが、触ってみれば誰でもつるつるした表と、ざらざらした裏のちがいが分かります。
当社では、バスケットを作る場合、中味(入れる部品など)が接触する内面側に、必ず表のつるつるした面をもってくるようにしています。
部品にキズをつけたらいけません。
もちろんユーザーの指示があればその通り作りますが、バスケット以外の用途のもので裏表をどうしたらよいか判断付かないものもよくありますので、確認が必要になります。
たまに両面バリ無し(面取り)のパンチングはないかとの問合せをいただきますが、非常に困難で現実的には無理と考えてください。
***穴径の最小限度のこと***
打抜きできる穴の大きさは、板厚との相関関係になります。大きな穴の方は、あまり問題にはなりませんが、小さな穴の場合は、板厚によって限度があります。
ステンレスで丸穴の場合は、基本的に、板厚より大きな穴径でないと打ち抜けません。つまり、板厚が2㎜の場合、2㎜より大きな径の3φとか5φはOKですが、1φ穴は不可です。
板厚と同じ穴径の場合は限界に近いため、出来たとしてもピッチが大きめになり、価格も跳ね上がります。小さな穴で、強度的に厚い板を使いたいという要望はよくあるのですが、コストが大きく違ってきます。
1t×1φ×2p とか 2t×2φ×4p などは常時使用していますが、非常に高価な材料のため失敗やロスが大きいとがっくりしてしまいます。
上記は、ステンレスのパンチングの場合で、ステンレスより軟らかく打抜きやすい鉄(軟鋼)の場合は、板厚より小さな穴を開けることも出来るようです。(もちろん限度があります)
ステンレスで、板厚より小さな穴のパンチング(例えば1tに0.5φの穴)は、基本的に無理と考えてもらったほうがよいと思います。
そういう技術を持ったメーカーさんもありますが、オールマイティに可能な訳ではありません。また、価格的にも使うことが困難になってしまう面があります。
既製材料で手に入る一番小さな穴のパンチング板は、φ0.5程度で板厚0.3tか0.4tです。それより小さな穴のものもありますが、サイズや板厚に制約があります。パンチング業者さんに金型があれば、特注手配となりますが、プレス打抜きでの製造が不可能な時は、エッチングによる穴開けになります。エッチングとは、薬品で金属を溶かす方法です。開けたい穴(模様)の版を起こして、板を溶出(エッチング)させて穴をあけるものです。高価な材料になります。当社では使用実績がほとんどありませんが、ご紹介まで。
***半欠け穴のこと***
パンチング板で製品を作るとき(加工)で、工夫が必要なのが、穴の半欠けをどのようにうまく処理するかということです。半欠けになったところは、とがった先が指に刺さったりして危険なのです。下の写真は、パンチングを切断したときの半欠けになったもの。
← 半欠け穴・危険です!
どのように加工するかが、
技の見せどころ。
パンチング板は、基本的に定尺板サイズの既製品材料を使用するため、さまざまなサイズに切断して加工するとどうしてもこの半欠け穴が発生します。
製品にあわせて縁取り(穴なし部)をつくろうとする場合は、パンチング業者に特注サイズ(スケッチ)で打抜いてもらわなければなりません。
大量生産品であればコストメリットが見込めますが、一般的にはかなり割高な材料になってしまいます。
かといって、手のひらサイズの製品を1個だけ作るために、1m×2mの定尺板を仕入れていたのでは、あまりに材料ロスが大きすぎて妥当な製品価格にはなりません。
パンチング板は種類も多く、通常の鋼板のように残った材料を利用できる確率が少ないため、材料手配をどうするかいつも悩むことになります。
(金網も同様です)。
余談ですが、パンチングの打ち抜き不良の古い写真が出てきましたのでご紹介まで。
厳しいパンチ加工の場合、金型の破損もあるようです。
残念!NG
*** 反りやゆがみのこと ***
パンチング板は、パンチ加工時の応力などで板が反ったり、波のようにゆがんだりします。
パンチの加工強度が厳しいほど板の歪みは大きくなります。パンチングの加工業者さんは、そういった歪みを修正する「レベラー」を通してなるべく平坦に仕上げているはずですが、元の板のように平坦には戻りません。
パンチングの加工品は、図面上では真っ平ら(ベタ)でも、実際は反りやゆがみが残ってしまいます。また、その上に溶接歪みも発生します。
ベコベコした板のふくらみ部分を押し込むと、その横がふくらむといった「モグラたたき」状態も発生します。歪みを取って平坦にするのは、なかなか難しいのです。(笑)
このような歪みを最小限にするために、板を曲げたり、プレス成形したりなど設計時点での工夫が必要になります。その辺は、加工&設計のノウハウとなります。